職人さんの知恵や工夫が散りばめられた、昭和5年のお墓の傾き直し工事。都立谷中霊園

東京全域でお墓のお仕事をさせていただいております、石誠メモリアルサポートの松本です。都立谷中霊園にて、傾斜したお墓の据え直し工事をさせていただきましたのでご紹介いたします。

谷中霊園 傾斜したお墓の据え直し

谷中霊園にお墓をお持ちのお客様より、「お墓が傾いているから見てほしい」とご相談をいただきました。区画番号を伺って早速現地へ向かい、状況を確認させていただきました。息子様が弊社の近くにお住まいでしたので、そうしたご縁もあってお声かけいただけたのかもしれません。

お墓の様子です。おっしゃるように、確かにかなり傾いています。お墓の傾きでよくあるのは、石塔が傾斜している、カロートが傾いているといった形ですが、こちらのお墓はお墓が全体的に傾いていました。この場合は、基礎からやり直す必要があります。昭和5年建立のお墓ですので、昔のお墓で基礎がほとんどなかったことも原因のようでした。

お墓の確認後、お客様にメールで状況をご報告しました。何度かやり取りした後ご来店いただいてお打ち合わせをして、工事をお任せいただきました。工事の前には、最後のお参りとご遺骨の状態の確認をしたいということでしたので、現地でお会いしてお手伝いもさせていただきました。

 

最後のお参りのあと、工事開始です。お墓を取り外して基礎工事のため地面を掘り下げました。

 

床堀りをして、グリ石を入れました。転圧して地盤を固めます。

 

さらに砕石を入れて地盤を固めます。

 

転圧が終わったら木枠を組み、配筋して生コンクリートを流し入れます。中央の四角い穴は、カロートの下にあたるところです。

 

しばらく養生期間をおいて、基礎が完成しました。いよいよお墓の据え直しに入ります。

 

基礎の上に、一番下の土台の石を据えました。すべての石に番号を振ったテープを貼っておいて、間違いなく同じように据え直しできるようにしました。昭和5年に建てられたお墓ですので、すべて手加工で内側はゴツゴツしています。

 

二段目を据えました。大掛かりな工事になりましたが、しっかり基礎を打ってから据え直しているので安心です。

 

二段目まで組んだあと、内側にカロートを組みました。こちらの表面も手加工のノミの跡のようなものが見えます。

 

カロートの上に石塔を組み上げました。通常のお墓の組み上げとは違うので、少し大変な作業でした。

 

後方です。このあと外柵の玉垣等を設置して、目地を打って全体をきれいに洗浄したら工事完了です。

 

基礎から行った据え直し工事が完了です。傾きがなくなり、安心してお参りいただけるようになりました。

今回は、現代のお墓とは据え付けの工法から部材の加工精度まで全く違うので、さまざまな点で工夫しながら工事を進めました。どの部材がどの位置にあったのか分からなくならないようにしつつ進め、一旦すべて解体して据え直しをしても、以前の雰囲気などを損なわないように気を配りました。

 

以前の姿を守りつつも、カロートの中は全く同じではなく、できるだけ納骨しやすくなるように施工しました。また花立は、この機会にステンレス製のものに交換しています。手前の階段石は、今の決まりでは新たにつけられないものですが、今回は現状維持ということできれいにして据え直しました。

お客様からは、工事後にお声を寄せていただきました。

お墓の傾きの件でご相談からお世話になり、このたび施工していただきました。とてもしっかりとした基礎を作った上で傾きを修正していただいたおかげで、今後末長く安心してお墓参りができると思っています。長いこと心につかえていたお墓の修繕という悩みが落ち着きました。ご先祖様も安心したことかと思います。
この度は丁寧な仕事を良心的な費用で請け負っていただきまして本当にありがとうございました。また何かございましたらその時はよろしくお願い致します。

このたびは弊社に工事をお任せいただきまして誠にありがとうございました。安心していただけたとのこと、スタッフ一同大変うれしく思っております。こちらこそ、これからもどうぞ末永くよろしくお願いいたします。

今回は、とても古くからのお墓の傾きを直す工事をご紹介いたしました。現代のお墓には、地震などでも倒れないよう様々な耐震・免震の技術などが採り入れられています。昔のお墓は今のような最新の技術も道具もありませんが、ある都立霊園に建てられたとても大きな古いお墓の中には、地震で倒れたりすることなく今に至っているものもあります。それは、今のお墓とはまた違った技術や工夫があるからだと思います。今回のお墓も傾いてはいましたが倒れることはなく、工事中随所に昔の職人さんの知恵や工夫が散りばめられているのを感じました。100年以上もの時代を経ても残っているものの知恵や工夫はやはりすごいなあと、改めて勉強になったお仕事でした。